9月5日、シンポジウム「人と人を食で結ぶ八王子を構想する」を開催しました。当日は、定員50名を超える60名の様々なセクターの方々にお集まり頂きました。ありがとうございました。以下、その内容と結果をご報告します。
最初に「イントロ」として、フードバンク八王子が、具体的にどのような仕方で「人と人を食で結ぶ八王子を構想する」のか、その概要を説明して、次の基調講演「食品ロスの削減とフードバンク」というテーマへの橋渡しを行いました。
次の農水省・佐藤氏による基調講演「食品ロスの削減とフードバンク」の発表資料の公開は、残念ながら許可されませんでした。
後半のパネル・ディスカッションについては、以下に、その要旨をまとめました。会場も交えた、非常に活発な意見交換がなされました。
パネルディスカッション「地域の企業とフードバンクの関係構築へ向けて」
農林水産省 バイオマス循環資源課 食品産業環境対策室 佐藤裕史 氏
パルシステム生活協同組合連合会 地域支援本部環境地域支援部地域活動支援課課長 堀籠克衛 氏
有限会社 バーゼル洋菓子店 代表取締役 渡辺純 氏
フードバンク八王子 川久保美紀子
コーディネーター 國本康浩
國本 まずは自己紹介を。佐藤さん、全体の印象は?
佐藤 若い年代、学生が多いのが印象的。
渡辺 バーゼルは昨年50周年を迎えたフードバンクについては無知、どんな協力ができるかを探っている状態。
堀籠 パルシステムは生協であり、宮城県から西は山梨静岡まで、1都9県で食品を取り扱っているし、社会課題にも積極的に取り組みを考えている。とりわけ、フードバンク、子ども食堂など。
國本 八王子にはフードバンクが3団体ある。会場にいらっしゃるのでコメントを。
神山 フードバンクTAMAです。日野、立川、町田など多摩地域のフードバンクを目指している、立ち上げて3年。
三浦 フードバンク八王子えがお。フードバンク八王子と同時期に立上げ
フードドライブで食料を集めている。
國本 基調講演では、企業との関わりの作り方、協定文書、衛生管理等のお話が佐藤さんからあったが、企業の食品ロスの現状と削減の課題については?
渡辺 バーゼルは年間1千万円のケーキを捨てている、セブンイレブンでは1店舗当たりその金額と聞いて驚いている。企業としては利益との相殺、何とかしたいが何ともしようがない、生産を減らせば売り上げが減る、対策のしようがない。
堀籠 生協なので、基本、カタログで注文→メーカー、産地に発注→配達というシステムなので、ロスは出にくい。しかし野菜は週に5tくらいロスがでる、破損分もあらかじめみこんだ発注もある、あと、配送に伴う包材が課題。
國本 会場の生産者、農家の水野さんはいかがですか?
水野 農家の現状には課題があり、関心がある。もったいない気持ちが強く、生産時のロスも注目してほしい。
國本 企業がフードバンクと繋がる上での課題とは?
渡辺 飲食業として、ロスをなくす、困っている人に食べさせる、何ができるのか、食の仕事をしている以上、正直余った食材をフードバンクに持って行くというのは楽しくないし、いろいろな手間暇がかかることを思うと考えられない。
子ども食堂って、よく聞くがわからない。自分の店に来てもらうのが手っ取り早いのではないか?ランチの後2時~6時の2時間、各店持ち回りで店に来てもらって、無償で食べてもらう、フードバンクにはそういう人を連れてきてもらいたい、喜んで食べてくれる人が目の前にいるのは嬉しい、スタッフのモチベーションアップにもつながる。
國本 飲食業としてできることがあると。必ずしもフードバンクを経由する必要はないし、受益者とのダイレクトな関係を作るという提案は面白い。会場の八王子市自立支援課の遠藤さんのご意見は?
遠藤 新たな発想、アリだなと思った。自立を支援する立場としては、参加の場としても考えていただきたい、ひきこもりなどの方に1~2時間程度の仕事の場としてはどうだろう?個別に相談させてもらいたい。
國本 フードバンクと企業の関係には信頼性の担保が不可欠ですが、手間暇が…という意見について、佐藤さん、いかがか?
佐藤 貴重な意見として拝聴した。日々管理は大変ですが、何かあった時には団体、活動の存続にも関わるもの、しかし施設規模やマンパワーなどの問題もあり、実態に合わせて活用をしてほしい。
國本 団体の現状に応じて、また、個々の関係に応じてカスタマイズ可能ということですね。
堀籠 パルシステムとして、いや、堀籠個人の意見としては、現在は個別にフードバンクや子ども食堂を支援しているが、将来的には全体的な仕組みとしてフードバンクを通して受益者、子ども食堂などへの支援をしていくことを考えている。例えば、受け取る側の課題は、人、物、金、物流。物があっても受取に行く手段がない、車がない、人がいない→その物流の仕組みを考えている。貧困の課題、ひきこもりや高齢者、母子家庭などの雇用の場として、物流を事業化したい、保管管理など生協の仕組みを作ってできないかと、まだ個人の段階だが考えている。
國本 これは事業体そのものを作るという革命的な発想ともいえる。確かに、現場は物流で本当に苦労している。
水野 どうやってフードバンクに持っていくのかは課題、生産者の場合、ロスはいつでるか、でないかわからない、日程を約束できない、安定的な供給は難しい、どうしたらいいのか?
川久保 すべてがフードバンクというわけではなく、地域の食堂はその地域のコミュニティが支えあうことが大事。農家、商店、住民、小さな範囲だからこそいつ食堂がやっているのかもわかるし、取りにもすぐ行ける、そうした食堂を中心とした地域のコミュニティづくりも大事。
水野 実は、2つの食堂とつながりがある、近いからできることも確か。小さなコミュニティを複数作っていくことは必要だと思う。
國本 フードバンクを経由するネットワークと食堂独自のネットワークと両方が必要であり、それが相互に食で結ばれる。しかし、野菜を無償で提供するのは難しいのでは?安価でも引き取れるようなシステムも考えていければ。最後の設問になるが、八王子の中で食品ロスの循環回路、それに参加することの企業のメリットは何か。佐藤さんに、まず要約して頂くと。
佐藤 NPOなどに食品提供を行うと税制優遇がされる。更に、EGS投資(環境environment、社会social、企業統治governanceに配慮している企業を重視・選別して行う投資)が投資家のトレンドになっている、フードバンクへの寄付をPRすることで投資家も注目し、資金面でのメリットも見込めるでは。
渡辺 しかし、物を動かすことは大変難しい、賞味期限の近いものを回すことでのリスクやその労力が問題。飲食店としては、心のこもった商品を食べていただきたい。佐藤さんの資料に寄付が9億4600万円とあったが、1食300円としてその半分を150円をその寄付金が使えるとすると、年間630万食作ることができる、1日当たり16,000人が救済される、飲食業が交代で月1、2時間くらい頑張り、それにフードバンクの活動がうまくかかわってくれればできるのではないか。
國本 制度で支えてくれることで結びつきが拡がってくる可能性が確実にある。逆に、農林水産省に提案したいところだ。
堀籠 水野さん、パスシステムでも消費者に回せない野菜があり困っているが、それを加工品に回している、理解あるお店があれば加工品として使ってもらえるのではないか。生協としては社会的課題にアプローチすることも大事、生協としては社会的課題にアプローチすることも大事。この5~10年で高齢化社会は急激に進む。パスシステムの個別の購入額も8,000円から5,000円に下がっている、食べられない世帯が増えているということ、このまま下がり続けると打撃は目に見えている。元気な高齢者が増えることで食べてもらえる→購入額の減少が抑えられる可能性がある。まずは関東エリアからアプローチ、助け合いができるシステムを構築し、共生していける社会、地域づくり、今のうちにテコ入れをしたいと考えている。特に八王子は元気な高齢者が多く、だからこそ、ひきこもり、母子家庭などを地域で支えあっているという循環の回路をつくる必要があるのではないか。
國本 本日は、地域のことは地域で、このような地域主義を標榜するシンポジウムに、ご参加ありがとうございました。
Comentários