まちづくり。
人は気軽に、この言葉を口にするが、それがどれほど難しいことか。
昨年末、八王子市の中心市街地政策課が公表した全体で120ページを越える文書「八王子市中心市街地活性化基本計画」を熟読しながら、私は、まちづくりという営みの難しさを痛感していた。
中心市街地のまちづくりに、ほんの少しだけ関わろうとしている自分の無知と無謀さを、この網羅的で体系的な文書が厳しく教えてくれたような気がしている。この点で、中心市街地政策課のこの労作には、心から感謝したい。
その恩返しとして、私は、この文書に対して、生まれて初めてのパブリックコメントを提出した。
締切日(1月18日)に提出したパブリックコメントの全文を、以下に掲載する。
【要点】
今回の基本計画で「まちづくりを担う民間組織」(p.40)として位置づけられているのは何か?
仮に「それがない」のだとしたら、その理由は何か?
【詳細】
「現計画の総括」(p.40)で、中心市街地政策課は「目標を達成することは困難」との率直な自己評価を下している。
その理由として彼らが挙げているのは「中心市街地活性化協議会が設立されず、まちづくり会社も計画期間中に解散するなど、まちづくりを担う民間組織が不足していた」点であるが、このような分析の背景にあるのは、彼らの「中心市街地の活性化には、民間活力が欠かせない」との適切な基本認識があるからであろう。
誠実でありながら、かつ納得できる分析である。
しかし、では、今回の基本計画の中では、上記で自ら「不足していた」と指摘している「まちづくりを担う民間組織」として何が位置づけられているのだろうか?
2017年に設立された「中心市街地活性化協議会」だろうか。
しかし、その活動内容を定義した「八王子市中心市街地活性化協議会 規約」の第五条を参照する限り、「協議」や「調整」、「情報交換」や「調査研究」は記載されているが、この「まちづくりを担う民間組織」に期待されている「空き店舗対策やイベント連携事業等の商業活性化及びにぎわい創出のソフト事業」(p.40)は、その活動範囲に入っていない。
それでは、この「中心市街地活性化協議会」の一翼を担う「一般社団法人八王子市まちづくり公社」だろうか。
しかし、この公社は、八王子市から「中心市街地整備推進機構」に指定されており、この「中心市街地整備推進機構」の本務は、中心市街地の「整備事業」や「管理」、「調査研究」であり、一言で言えば「インフラに関わる事業」である。
従って、これもまた、上記の「ソフト事業」の事業主体として適切であるとは思えない。
要するに「中心市街地活性化協議会」も「八王子市まちづくり公社」も、いわば「図体が大きすぎる」のだ。
つまり、結論として、今回の基本計画を読む限り、それが「不足していた」がゆえに目標を達成できなかった「まちづくりを担う民間組織」として何が位置づけられているのか、わからない。
あるいは、中心市街地政策課は「民間組織の束」を想定しているのかもしれない。
しかし、もし仮にそうだとしたら、その「束」が、その不足分を埋めることができると想定している理由は何か?
この文書を読みながら、これまで自分のごく狭い活動範囲しか知らず、中心市街地の全体を把握する機会がなかった私にとっては、様々な発見と(望むらくは建設的な)疑問が幾つも浮かんできた。
上記は、その一つに絞った疑問点のみ、書き出したものである。
更に再読することを通じて、自分なりの見通しを立ててゆきたいと思っている。
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